乳歯は、乳幼児期に生える最初の歯のことをいいます。
これらの歯はのちに生えてくる永久歯とは異なり、生後6ヵ月頃から生え始め、2〜3歳までに上下合わせて20本の乳歯が生え揃います。
一番目に生えてくる歯は、下の前歯が一般的です。まずは上下の前歯が生えてから、その隣が続いて生えてきます。乳歯の生え方、順番やタイミングはそれぞれで、早ければ最初の歯が生後4ヵ月頃で生え始める子もいれば、1歳になってから生え始める子もいます。個人差は半年以上の幅があるため、早い遅いはあまり心配しなくても良いでしょう。
乳歯は将来的に永久歯に生え変わるため、一時的なものではありますが、言葉の発音や咀嚼の役割を果たすだけでなく、顎の発育を助けて顔の形を整え、永久歯がしっかり生えてくるスペースを確保する役割もあります。そのため、乳歯の健康を保つことは将来の永久歯の発育にも影響を与えます。
乳歯は発育が終わると抜け落ち、その後に永久歯が生えてきます。適切な自宅でのケアや歯科医院での定期検診によって乳歯の健康を保ち、永久歯の発育にも問題がないようにすることが大切です。
虫歯の主な原因はお口の中に存在する細菌によるものです。
歯垢は細菌の塊で、歯や歯ぐきに付着したネバネバとした白っぽいものをいいます。
歯垢1mgに対して約1億個以上の細菌が住み着いているといわれていて、それが虫歯や歯周病などのトラブルを引き起こす原因となります。
この細菌が糖分をエネルギー源として酸を生成することで歯の表面から虫歯を作り出します。
歯垢に含まれる細菌は、糖分をエネルギー源として酸を生成し、歯のエナメル質を侵食します。甘いものを食べすぎると虫歯になるといわれるのはこのためです。
いわゆる虫歯菌と呼ばれる細菌は、特に甘いジュースやお菓子に含まれる砂糖を好むため、子どものおやつや甘いものを食べる頻度やタイミングを上手にコントロールできると良いでしょう。
乳歯が生えている間にはある程度子どもの食生活の好みが見えてきますが、甘いものを欲しがった時に毎回与えているとその分虫歯のリスクが高まってしまいます。
決して食べてはいけないわけではありませんが、食べる頻度や量を調節してみたり、キシリトール入りのお菓子に変えてみたりするなど少しでもリスクを減らすと良いでしょう。
虫歯が作られるまでには時間が関係します。
食事や間食をすると、お口の中が酸性に傾きます。酸性に傾くと歯が溶け出し、虫歯が少しずつ作られます。この酸性になっている状態が長く続けば続くほど虫歯になりやすく、進行しやすい状態となります。
つまり食事や間食の回数が多かったり、だらだらと時間をかけて食べたりする子は注意が必要です。どうしても大人よりも時間をかけて食事をしたり、こまめに間食を取ったりするなど思うようにはいかないことが多いですが、なるべく規則正しい食生活を心がけると良いでしょう。
歯磨きが十分にできていないと歯垢が溜まり、虫歯になりやすくなってしまいます。とはいえ、まだ子どもだけでしっかりと歯磨きができる年齢でもありません。
特に1〜2歳では歯磨きを嫌がる子どもは珍しくありません。イヤイヤ期とも重なって歯磨きをすることが難しい時期でもありますが、なるべく手短にしっかりと歯磨きができると理想的です。
前歯だけでなく、磨きにくい奥歯も生えてくる頃で保護者による歯磨きが欠かせない時期でもあります。
特に奥歯は大人もそうですが虫歯になりやすい場所です。その子に合ったやり方で歯磨きを楽しみながらできると良いでしょう。
乳歯は永久歯よりも虫歯になりやすいといわれています。永久歯よりも歯のエナメル質が薄く、酸や細菌による侵食が起こりやすいためです。
また、子ども一人では歯磨きが十分にできないことも多く、保護者による仕上げ磨きが大切な時期でもあります。じっとしていられなかったり歯磨きを嫌がったりする子どもも少なくないため決して容易ではないですが、根気よく歯磨きの習慣を身につけていくことが大切です。
他にも乳歯は永久歯がしっかり生えてくるためのスペースを確保する役割を担っています。
しかし乳歯の発育によって歯並びが前後していたり十分なスペースが保てないと歯と歯の間が磨きにくかったり食べ物が挟まりやすくなるなど虫歯のリスクが高まることがあります。
年齢に合った子ども用の歯ブラシや歯磨き粉を使用しましょう。保護者が磨く場合には仕上げ磨き用の歯ブラシを使うと良いでしょう。
食後には歯を磨くこと、前歯だけでなく奥歯、そして噛む面や歯の裏側など隅々まで磨くことを伝えながら少しずつ子どもが自分自身で磨く習慣を身につけていけると理想的です。
自分で磨きたがるタイミングにはお気に入りの色やキャラクターの歯ブラシを持たせてみたり、好きな味の歯磨き粉を使ってみたりと子どもの成長に合わせてできるだけ楽しみながら歯磨きをする工夫ができると良いでしょう。
また、歯科医院で適切な歯磨き方法を学び、より効果的な歯磨きができるように改善していきましょう。
歯にフッ素を塗布することで歯を強化し、虫歯の予防効果が期待できます。市販の歯磨き粉にはフッ素配合のものが多く、毎日の歯磨きで手軽にフッ素を取り入れることができます。子ども用の歯磨き粉にも年齢に合わせた量のフッ素が含まれていることがあります。
歯科医院では市販の歯磨き粉に含まれるものより高濃度のフッ素を歯に塗布することができ、数ヵ月に一度の受診時にフッ素の塗布を習慣化することもあります。フッ素の使用は歯の状態により一人ひとり対応が異なるため、歯科医院で相談してみましょう。
歯と歯の間に溜まった汚れは、歯ブラシだけでは取り除くことが困難です。そこで役に立つのがフロスです。歯と歯の間は汚れが溜まりやすく虫歯になりやすい部分でもあるため、フロスの使用は大切です。
子どもがフロスを好きになるためにも、フルーツ味のついた小さめのフロスを使うなど子どもの年齢に合わせて取り入れてみるのも効果的です。
楽しく歯磨きをするための環境作りはとても大切です。歯磨きはやらなくちゃいけないものという認識ではなく、楽しいことだと意識することで歯磨きの習慣化がしやすくなるでしょう。
歯磨きの歌を歌ったり動画を見たりと楽しみながら行うのも効果的です。子どもが好きなキャラクターの歯ブラシやお気に入りの歯磨き粉を使うなども良いでしょう。
保護者が楽しそうに歯磨きをするところを見せてあげると子どもも一緒になって楽しんでくれるはずです。
栄養バランスの取れた食事は全身の健康だけでなく歯の健康にも関わります。歯に優しい食品としてチーズや野菜などカルシウムやビタミンDを含む食べ物を摂取することで、歯や骨の発育をサポートします。
虫歯の原因のひとつでもある糖分には注意が必要です。
糖分の摂りすぎは虫歯のリスクを高めてしまうため、食べ方やタイミングに気をつけましょう。甘いお菓子やジュースなど砂糖を多く含んだものを摂りすぎないように、おやつを代えてみるのも良いでしょう。例えばバナナやさつまいもなど果物や野菜、おにぎりなど健康的なものに代えてみてはいかがでしょうか。
食べる時間にも気をつけましょう。虫歯の進行には時間の経過も関係します。
細菌が糖分をエネルギー源として酸を生成することで虫歯が作られます。食事や間食の後にはこの働きが活発になり、お口の中が酸性に傾いた状態となります。この時間が長く続くことで虫歯になるリスクが高まります。つまりだらだら時間を決めずに食べ続けた場合には常にお口の中が酸性に傾いた状態、虫歯になりやすい状態が続いてしまうということです。
食事はもとより、間食やおやつは食べる時間を決めてだらだら食べ続けることのないようにすると良いでしょう。
歯科医院で定期検診を受けることで、気付きにくい小さな虫歯や初期の歯のトラブルを早期に発見することができます。お口の中の小さな変化は、症状がない限り自分ではなかなか気付きにくいものです。
定期的に通うことで前回からの変化がないかどうか、経過観察をすることもできます。特に乳歯の場合、永久歯に比べて虫歯の進行が早かったり予防処置が必要なケースがあったりと歯科医院で専門家に診てもらうことが重要になってきます。
また、検診と併せてクリーニングを受けることも大切です。子どもと保護者による歯磨きだけでは落としきれなかった汚れも隅々まできれいにしてもらうことで虫歯予防を徹底していきましょう。磨き残しがあった場合には磨き癖がないかどうか、ブラッシングの改善点を聞いてみるのも良いでしょう。次回の来院までに歯磨きのスキルを見直して少しずつ上達していくきっかけにもなります。
乳歯の虫歯は将来的に永久歯にも影響を及ぼすことがあります。乳歯はいずれ抜けて永久歯に生え変わるから虫歯になっても大丈夫と思ってしまうのは危険です。乳歯の虫歯予防は永久歯の虫歯予防でもあります。
生え変わりの時期に乳歯の虫歯が見つかるとお口の中で細菌が行き交うことで、永久歯にも虫歯菌が付着する恐れがありどの歯でも虫歯になる可能性があります。虫歯によって早めに乳歯を抜かなくてはならなくなった場合には、隣り合う歯の支えがなくなり永久歯が生えてくるスペースが十分に取れなくなってしまうこともあります。
乳歯の虫歯は永久歯の成長にも大きく関わってくるため、早い段階から虫歯予防に努めていくことが大切です。
乳歯の虫歯予防にはさまざまな方法があります。子どもの年齢や性格によってもアプローチ方法は変わってきます。
虫歯に関わる細菌や糖分、時間などなるべく避けるべき状態を理解しておくと毎日の行動を少しずつ改善するきっかけにもなります。
自宅でのケアと併せて歯科医院で定期的にチェックしてもらいプロによるケアも取り入れていきましょう。