親知らずの抜歯が寝ている間に終わっていたら、そんなに楽なことはありませんよね。当院の親知らずの抜歯は局所麻酔での対応になりますので、全身麻酔や静脈内鎮静法による抜歯をご希望される場合、遠慮なくお申し出ください。その際は簡易的な検査を行い、紹介状をお渡しいたします。
ここでは紹介状をお渡しするときの注意点や全身麻酔などについてご案内します。
当院の方針として、親知らず=抜歯とは考えおりません。親知らずが噛み合わせに関係している場合、歯磨きができる場合、虫歯になっても治療が可能である場合、移植が必要になる場合などでは積極的に残すことにしています。
ただし、多くの親知らずは磨きにくかったり、生え方が悪かったり、全体の歯並びに悪影響を及ぼしたりと問題を抱えていることがほとんどです。そういった場合は痛みの有無にかかわらず、周りの歯を守るために抜歯することをお勧めしています。
このようにまっすぐ生えていて、上下で噛み合っている親知らずを抜く必要性はないと考えています
親知らずの抜歯は時間がかかることが多いですが、治療への恐怖心が強いと余計に時間がかかってしまいます。無理に治療を続けることでパニック状態になってしまうこともあります。
親知らずの抜歯では器具を奥まで届かせますが、器具操作により吐き気を感じる方では治療ができないことがあります。
親知らずの抜歯では通常の歯科治療よりも多量の麻酔薬を使うことがあります。また、抜歯は観血的処置のため、高血圧や心疾患といった循環器系の疾患の方では全身状態をモニタリングしながら抜歯をすることが望ましいことがあります。さらに全身疾患の度合いによっては抜歯後の感染対策や止血処置を目的に入院した方が良い場合があります。
親知らずや顎の大きさによっては、とんでもない場所に親知らずが位置していることがあります。
血管や神経との位置関係により抜歯処置が長時間になることが予想される場合や外科的侵襲が大きくなる場合には全身麻酔で行った方が良いことがあります。
※難易度の高い親知らずについては後述
例えば4本の親知らずをいっぺんに抜きたいといった希望がある場合、身体的負担が大きくなりますので、全身麻酔や静脈内鎮静法を行った上で抜歯をした方が良いことがあります。
その名の通り、全身を麻酔しますので、痛みも意識も全くありません。手術室に入るまでの記憶はありますが、次に気がついた時には全てが終わっている状態です。日帰りで全身麻酔を行っている病院もあるようですが、麻酔が覚めるのには時間がかかるため基本的には入院になるでしょう。
全身麻酔とは異なり、意識はありますし、痛みも感じます。そのため、局所麻酔を併用して処置を行います。ただし、どっぷりと寝ている状態になりますので、処置中の記憶はほぼありません。麻酔が覚めるのにはさほど時間はかからないため、日帰りでの対応になりますが、当日は車や自転車、バイクの運転は避けましょう。
親知らず抜歯の難易度は様々な条件により決まり
ます。
埋まっている親知らずの方が生えているものと比較すると難しいです。
下顎の親知らずで最も気にするのは下顎管との関係性です。下顎管には神経と血管が通っていますので、親知らずと下顎管の距離が近いとより慎重な手技が必要になります。神経の圧迫や損傷は術後の神経麻痺の原因となりますので、術前にCTを撮影し、3次元的な位置関係を診査する必要があります。
上顎の親知らずでは副鼻腔の一つである上顎洞との関係性が重要です。偶発事故の一つに親知らずが上顎洞に入り込んでしまうことがあります。
親知らずはとんでもない方向を向いていることがあります。通常とは逆を向いていたり、奥へ奥へと潜り込むような親知らずもあります。
曲がっていたり、瓢箪のような形をしていたりと親知らずは実に様々な根の形をしています。事前にCTで確認しておくことが重要です。
手術の基本は「よく見える」状況で行うことです。親知らずは口という狭い空間の中で最も奥に位置しています。口が開きにくい方では器具の操作が困難になります。また、頬や舌を傷つけないように排除して処置を行いますが、舌が大きい場合や、頬が硬く延びにくい場合は排除が難しく処置時間が長くなることがあります。
手前の歯に食い込んでいる上顎親知らずです。放置しておくと、手前の歯が歯根吸収する可能性があるため、抜歯した方が良い親知らずです。ただし、上顎洞とも非常に近接して、完全に埋まっている状態ですので、難易度の高い親知らずです。
横向きの下顎親知らずですが部分的に骨に埋まっていないため、智歯周囲炎(歯ぐきの腫れ・炎症)の可能性があり、抜歯した方が良いでしょう。しかし、歯根は下顎管と近接し、先端が曲がっているので難易度の高い親知らずです。
出来ることなら避けて通りたいのが親知らずの抜歯ですが、抜かなければいけない状況になったのであれば、担当の先生と「いつ」・「どこで」・「どのように」・「誰が」抜くのかをよく相談しましょう。