根管治療と言っても、治療が必要になった原因や感染の度合い、根の長さ・曲がり具合によっても治療の難易度が変わりますので、一概に根管治療と言っても、成功率は異なってきます。
根の中に白い線状のものが確認できます。これは以前に根管治療されている証拠ですので、この歯は再治療になります。
根の先に黒い丸があります。これが根尖病変です。この症例ではレントゲン上で計測すると10mmを超える大きさがあり、治療の成功率は低いことが考えられました。
多くの研究はこの2点を基準に成功率を出しているようです。成功率をざっくりとまとめると、初回の根管治療では90%以上、根尖病変のある場合では約80%、再治療の場合では約70%とのことです。これはあくまでも、数々の論文をまとめた平均的な数値ですので、ご参考程度にお考えください。
再治療で根尖病変が5mm以上の大きさの場合、成功率は38%まで下がるとの論文報告があります。この38%を高いと考えるか、低いと考えるかは人それぞれでしょう。ただ、検査結果から成功率が38%の歯なので抜歯しましょう、という判断にはなりません。残せる可能性が少しでもあるのならば、治療を行うことを選択肢に入れ、患者様と治療方針を決めていきます。
成功率を考える上で大事なことがあります。言い訳のようにも聞こえるかと思いますが、根管治療は感染症の治療になりますので、患者様自身の免疫力も治療の成功率を左右する要因となります。
虫歯を取り残した状態で根管を触ることは綺麗にすべき根管を汚染させる行為になります。
唾液は細菌を含んでいます。根管の中に唾液が入る=感染の拡大です。ラバーダムを使用することで治療中の歯に唾液が入ることが防げます。
適切な滅菌処理をした器具を使います。
根管は大変細くなっていますので、肉眼では確認ができない場合があります。そのような場面では拡大視して確認することで感染物の除去が可能になります。
根管治療は細菌を機械的・化学的に取り去り、再侵入させないように封鎖をする治療です。治療する歯に適した材料を選択することが重要です。
根管治療が完璧な状態で終了しても、クラウンの精度が低ければ、徐々に細菌が侵入し、再発の原因となります。再治療を防ぐためには、根管治療の質よりもクラウンの質の方が重要である、という論文も発表されています。
治療の成功率を上げるように様々な対策をして治療に臨んでいますが、細菌との戦いのため思い通りいかないことがあります。ただ、成功率上げ、再治療になる歯が少なくなるよう日々研鑽しています。