根管治療とは、虫歯菌が神経まで達し、感染した根管をキレイに洗浄を行い、最終的に再感染を防ぐために根管内を詰める治療です。
根管治療は「管」の汚れを取る治療です。これは排水管の中を綺麗に掃除するのと同じです。
病気の有無、3次元的な根管の形を把握することができます。
正確な診断のためには必須ですが、
保険診療では大臼歯しか撮影することが
できません。
根管を墨汁で染め出した状態です。根管はこんなにも複雑な形をしています。
通常のレントゲン撮影では確認できない根や、根の先の炎症もCTによって確認することができます。
なんとなく、感覚的な治療から、確実に「見て」治療をすることが可能です。見えるからこそ、感染物(汚れ)が取れているかどうかを判断できるのです。
なお、呼気に含まれる水蒸気で鏡が曇ってしまうので、マイクロスコープも用いて治療を行う際にはラバーダムは必須です。
ラバーダムの重要性根管の内部は汚れているのがわかります。肉眼ではこの汚れは見えません。
根管内部がキレイになり、目立った症状が消失したら、根管の内部を生体親和性のある材料をつめて再感染を防止します。
その際に推奨される材料はMTAセメントですが、これは保険適応外の材料となります。
MTAセメント | ガッタパーチャ (保険診療で使用する材料) |
|
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成分 | ポルトランドセメント75%
(コンクリートと同じ成分) 酸化ビスマス5% 精製水20% |
ガッタパーチャ(ゴム状の樹脂) 18~20% 酸化亜鉛 61~75% ワックスやレジン1~4% 重金属硫酸塩2~17% |
封鎖性 | 固まると膨張するので、隙間が出来ない。そ のため菌が繁殖するスペースがありません。 歯と接着する。 |
固まると縮むので、隙間が生じてしまう。 そのため、菌が繁殖しやすい状態になります。 歯とは接着しない。 |
殺菌力 | アルカリ性のため、強い殺菌作用 | なし |
硬組織誘導能 | 失われた骨が再生される | なし |
親水性 | あり。根管の完全乾燥が不要。 細い根管内の完全乾燥は非常に困難です。 |
なし。根管の完全乾燥が必要。 |
生体親和性 | 高いため、安全な材料です。 | 低く、表面にバイオフィルムが作られやすい。 つまり、再感染のリスクが高まります。 |
費用 | 保険適応外 | 保険適応 |
このように通常の根管治療で治せない場合、根管治療を外科的なアプローチで行います。これを外科的歯内療法といいます。外科的歯内療法の術式は、次の2つになります。
歯を抜き、お口の外で感染している部分を取り除き、歯を戻します。
病変と根の先を切除する手術を行います。
治療の過程で根の先端を刺激したり、治療による細菌叢の変化によって、
何もしない状態で痛む、腫れが生じる、噛んだ時に痛むなどの症状が出ることがあります。
数日で痛みが治ることが多いですが、耐えられない痛みがある、腫れが大きいなどの場合はご連絡ください。
根の中は非常に細いため、器具も細いものを使用します。そのため、器具が偶発的に折れてしまう可能性があります。
破折した場合は、可能な限り除去を試みますが、症状や歯の状態によっては除去せず、経過観察することもあります。
根の先が複雑な構造をしており、再度炎症が起きてしまうケースもあります。こうなった場合は、外科的歯内療法もしくは抜歯の適応となります。
根管治療を行うと、歯根の内部を削るため、根管治療を行っていない歯と比べると歯が薄くなります。
そのため、歯根が割れるリスクが高まります。
残念ながら破折してしまった場合は抜歯の適応となります。
根管治療が終了したら、噛み合わせや見た目の回復ためにコア(土台)+かぶせ物の治療が必要になり、ここまで行って治療が完了します。
さて、ここで問題です。
どちら再発が少ないでしょう?
答えは1)です。
根管治療もかぶせ物治療もどちらも大切ですが、かぶせ物の質が根の病気の再発に強く関わっているのです。それは、かぶせ物と歯の間に隙間があると、そこから細菌が歯の内部に侵入してしまうからです。
かぶせ物には様々な種類がありますので、担当医とよく相談しましょう。
根管治療を成功に導くためには、正確な診断を行い、よく見える状態で感染物を除去し、適切な材料で根管を詰めることが重要です。そして、根管治療が終了後のかぶせ物(クラウン)は再発を防ぐためにはとても重要です。
昨今、インプラント治療が盛んに行われていますが、天然の歯に勝るものはありません。抜歯はいつでもできますが、ご自身の歯を残すことはその時しかできません。