歯を抜かない、歯を残すために今からできること

  1. はじめに
  2. どうして歯を抜かないといけないの?
  3. 歯を抜くメリット
  4. 歯を抜くデメリット
  5. 歯を抜かないためにできること
  6. まとめ

はじめに

皆さんは歯を抜いた経験がありますでしょうか。おそらく、歯科医院での治療の中で最も嫌われる治療が歯を抜くこと、つまり抜歯でしょう。皆さんの抜歯に対するイメージは、「自分の歯を抜かれるのは怖い」や「注射から何からすべてが痛い」、「血が止まらなかったらどうしよう」といったところでしょうか。
その気持ちは大変理解できます。我々歯科医師も抜歯はとてもストレスを受ける処置です。できることなら抜きたくないという想いは、すべての歯科医師が持っていると言っても良いでしょう。

そこで今回は歯を抜きたくないあなたのために、今からどのようなことができるのか、何に気を付けるべきかについてお話したいと思います。この記事を読んで、自分でできる簡単なことを実践し、一生涯自分の歯を1本も抜かないようにしていきましょう。
また、すでに抜いたことがある人はこれ以上自分の歯を失わないようにできることを学び行動し、自身の健康資産を高めていきましょう。

歯を失ってしまった方へ

どうして歯を抜かないといけないの?

まずは、抜歯とはどんな処置なのかということからお話しします。抜歯とは文字通り「歯を抜く」という医療行為です。医療行為であるため、どんな歯でも抜いて良いというわけではありません。歯科医院でさまざまな検査をした後、歯科医師が歯を残すことが難しいまたは残していてもデメリットしかない、治療上どうしても抜かないといけないという判断をした時に初めて抜歯の必要性が正当化されます。

基本的に抜歯はあらゆる治療の最終手段に位置づけられています。というのも、皆さんもご存じとは思いますが、歯を抜く、特に永久歯を抜いてしまうともう二度と自分の歯が生えてくることはなく、我々人間は、乳歯から永久歯に変わるその1回しか歯が生え変わることはありません。

2つとして替えがきかないという点では、心臓、脳、目といった他の臓器と何ら変わりません。そう考えると生活習慣病にならないように生活習慣などを気にするように自分の歯を大切にしようという感情が湧いてくるのではないでしょうか。歯科医師は抜歯という行為を日常的に平然と行っているように思われる方もいると思いますが、もう2度と戻らないという考えを持っているため、できれば抜歯はしたくないと考えているのが実情です。

患者さまだけでなく、歯科医師もできるだけ歯は抜きたくないという考えは共通認識です。ではなぜ抜歯が必要なのでしょうか。それは歯を抜くメリットがあったり、他に治療法がなかったりするためです。具体的に、どのような歯が抜歯の適応となるのでしょうか。

それは、

  1. 重度の歯周炎により、歯を支える骨が大きく破壊された歯
  2. 重度の虫歯により、根っこだけになってしまった歯
  3. 根っこの病気が大きく、骨の吸収が著しい歯
  4. 根っこが割れてしまった歯
  5. 炎症の原因となり、周囲の骨や軟組織に波及する原因となっている歯
  6. 治療上やむをえない歯

の大きく6つが挙げられます。

歯の喪失原因のほとんどが、歯周炎(歯茎の炎症)と虫歯です。つまり、ほとんどが予防可能で、注意深く定期検診や治療を行っていけば、歯を抜く確率をかなり小さくすることができるということです。

歯を抜くメリット

歯を抜きたくないけれども抜かなければならない深い理由やどのような歯は抜く必要があるのかについてご理解いただけたでしょうか。抜歯も医療行為です。つまり治療を行う必要性があり、患者さまにとっては歯を抜くことで得られるメリットもあります。

次にどのようなメリットがあるのかについてお話します。

まず、歯を抜くことで顎の骨や周囲の軟組織への炎症が波及することを防げるということが挙げられます。歯周炎が進行してしまった場合や虫歯が大きく進行してしまった歯は、先述のとおり歯を抜くことが治療法になります。いずれの疾患も口の中の細菌が原因となって生じる疾患です。歯は骨の中に埋まっていますが、細菌感染が拡大し、炎症が歯を支えている骨まで及んでしまうことがあります。

これを骨髄炎と言います。骨は他の組織と比較して血流が乏しいため、抗菌薬の効果があらわれにくく、改善がみられない場合が多いです。感染のコントロールが難しく、膿がたまっていき、痛みや腫れはもちろんのこと神経麻痺が生じたり、膿が出口を求めて口腔内や最悪、皮膚に穴をあけたりすることもあります。

また、骨の炎症が広範囲に及ぶ場合は、全身麻酔での手術を行い、感染部位の除去や顎を離断することもあるため、放置することは極めて危険です。このように、歯だけの炎症を飛び越えて、顎の骨や周囲の軟組織への影響を未然に防ぐことができるというメリットがあります。

次に、ホームケアがしやすい状態にすることができることです。例えば、横に生えている親知らずを想像しましょう。横や斜めに生えている親知らずがある場合、親知らずの手前の歯との間の清掃が非常に難しくなります。実際にそう感じられている方、経験されている方もいると思います。汚れ(プラーク)が付着し続けることで周囲の歯茎に炎症が生じ、骨が溶けたり、手前の歯が虫歯になってしまい、治療が必要になったりすることがあります。

このような場合に、歯を抜くことで清掃しやすい状態、歯ブラシや歯間ブラシが届きやすい口の中になり、自身での清掃性が向上するというメリットが得られます。

3つ目が、円滑に治療を行えるようになるということです。これは、どちらかというと歯科医療側の視点かもしれません。例えば、矯正治療の時に行われる便宜抜歯です。歯を動かし、審美的にも機能的にも理想の位置に動かす矯正治療では、顎の骨の範囲内という制限があります。顎の骨の大きさが歯を動かすだけの十分なスペースが少ない場合は、歯を抜くことでスムーズに歯を動かすことができ、より理想とした形をできるだけ早く再現することができます。

ここでお話ししたように、一見歯を抜くことは嫌われていますが、歯を抜くことのメリットもあることをご理解いただけたらと思います。

親知らず(智歯)を抜く?抜かない?

親知らず(智歯)の隣の歯への影響

歯を抜くデメリット

次に歯を抜くことのデメリットについて考えていきましょう。

まずは、二度と代わりの歯が生えないということ、つまり代えが効かないということです。人間は永久歯を抜いてしまうと自分の歯はもう二度と生えてくることはありません。失ったままの状態が続いてしまいます。入れ歯にしてもインプラントにしても自分の歯に機能的にも敵うものはありません。つまり自分の歯を失うことで噛むこと、しゃべることなどのお口本来の機能が低下していくという難点があります。

次に、痛みや腫脹が生じることです。歯を抜くという行為は体の組織に少なからずダメージを与えます。体にダメージが加わると、生体内では、その反応に抵抗するために炎症反応が生じます。この炎症反応によって、術後の痛みや腫れが生じます。基本的には一過性で、1~2週間程度で自然に軽快することがほとんどですが、ひと時でも痛みや腫れが生じるのは患者さまにとってはデメリットです。

また、偶発症のリスクがあることも挙げられます。例えば、顎の骨の中や近くを走行している神経の損傷による知覚鈍麻や神経麻痺です。多くの文献で、一過性の症状ではあるものの神経は一般的に治癒がゆっくりのため、治るまでに時間を要します。そして、術後の出血も考えられます。特に全身疾患をお持ちの方の中には血が固まるのを阻害する薬を治療のために内服している方も多いです。そのような方は歯を抜いた後の止血に苦慮し、大変な思いをした経験がある方もいらっしゃることでしょう。もちろん、何らかの止血処置を行うことで、十分に対応が可能ではありますが、このような偶発症が生じることは患者さまにとって良いことではありません。

加えて何よりも患者さまの精神的なストレスが大きいということです。歯を抜くという恐怖から、前日に睡眠が十分にとれなかったり、緊張したりする方がほとんどだと思います。精神的な面は目に見えることではないので、我々としても気付きにくいことが多くあります。抜いた後の痛み・腫れのことやリスクのことを考えると患者さまの精神的な負担は相当なものだと思います。

このように歯を抜くことで患者さまにとって良くないことも起こりえます。すべての治療に言えることですが、デメリットが歯を抜くことにもあります。精神的な苦痛を考えると歯を抜きたくない、歯を抜くことが怖いと思う方がいて当然です。

歯を抜かないためにできること

ここまで、歯を抜くことがどういうことかについてお話ししました。では、最後に最も重要な、歯を抜かないためにはどうしたら良いのかについてお話します。

最初に挙げたように、歯を抜く原因は大きく6つあります。
このうちの5つについては基本的に予防することが可能です。つまり、歯を抜くことは未然に防ぐことができるのです。どうでしょう。少しは希望を持っていただけたでしょうか。歯を抜くことを未然に防げる5つのうち、ほとんどは細菌感染が原因となり、病気が進行していきます。したがって、細菌感染に対するアプローチが最も効果的です。

具体的には、家でのセルフケアや定期的な歯科受診などです。お口の中には非常に多くの細菌がいます。これらの中には虫歯や歯周炎の原因菌が含まれます。セルフケアが不十分で、細菌が増えやすい環境が長時間続いてしまうと病気が次第に進行し、最終的には歯を抜かないといけない状況にまでなってしまいます。日頃から歯ブラシだけでなく、歯間ブラシなどの補助道具を用いて予防的な処置に努めましょう。

また、自分では気付けない、落としにくい隠れた歯の汚れもあります。定期的に歯科医院を受診することでそれらの汚れを専門的な機械で落とすだけでなく、そこに汚れがつかないように一人ひとりに合わせた歯磨き指導を受けることで、虫歯や歯周炎の発症や進行を食い止め、歯を残すことで一生、自分の歯で食べられるお口の環境を作っていきましょう。

あわせて、定期的に歯科医院を受診することは早期発見や早期治療につながります。定期的に撮影するレントゲンで弱っている歯はないか、治療が必要な歯はないかなども確認することができます。特に根っこの治療をしたことのある歯は、細菌感染を再度起こすリスクや歯根破折のリスクが非常に高く、注意が必要です。診察をしっかりと受けることでそれらの予兆を見極め、取り返しがつかなくなる前に何らかの対応をとることは、歯を守ることにつながります。

虫歯の予防

歯周病の予防

まとめ

このように予防歯科や定期的な歯科受診を行い、自分の口に関心を向けることは、自身の健康資産を高めることに直結します。自身の歯を一生涯、できるだけ長く持たせたいという思いのある方は、お気軽に歯科医院をお訪ねください。

きっと通院して良かったと思える時が来ると確信しています。一緒に健康資産を高めていきましょう。皆さまのご来院を心よりお待ちしております。

総合的な歯科検診の
ご相談・ご予約はこちらから

TOP
初めての方へ
当院の特徴
料金表
よくあるお悩み
ドクター紹介
診療案内
口臭
症例
アクセス
お問い合わせ
WEB予約

©️ 秋津駅前すぐの歯医者・秋津歯科・矯正歯科

・平日 8:30-17:00 ・初診最終受付16:00
・土  8:30-17:00 ・再診最終受付16:30
休診日:水・日・祝