痛みがなく、虫歯や歯周病などの口腔疾患がなくても、自分の歯を守るために予防歯科は定期的な受診が必要です。しかし予防歯科のための通院頻度や、なぜ定期的な受診が必要なのか疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、予防歯科へ通う頻度がどのくらいなのかわからない人へ向けて、予防歯科の頻度や適切な頻度で通院しなかった場合のリスクなどについて紹介していきます。是非とも参考にしてください。
予防歯科の頻度は、一般的に3ヵ月に一度と通うとよいといわれています。歯と歯ぐきの間にある溝(歯周ポケット)の中にいる細菌の数はクリーニングをした後、おおよそ3ヵ月で元の数へ戻ってしまうためです。
しかし、口腔内の状況は人によって異なるため、一概に3ヵ月とは言い切れません。状況によっては1ヵ月や、2ヵ月に一度のペースでクリーニングが必要なケースもあります。
自分に適した予防歯科の通院頻度は、歯科医師や歯科衛生士と相談しながらスケジュールを決めるとよいでしょう。
次の5つの理由に当てはまる場合、予防歯科の頻度が3ヵ月に一度ではなく、早まる可能性があります。
順番に説明します。
歯磨きが不十分な場合、歯垢(プラーク)が多く口の中に残ります。プラークとは、歯の表面に付着する白っぽくネバネバした細菌の塊です。虫歯、歯周病や口臭は、プラーク内の細菌によって引き起こされるため、日常的な歯磨きでプラークを除去しなければなりません。
毎食後に歯磨きをしないことやデンタルフロス・歯間ブラシを併用せず歯ブラシのみで歯磨きをしているなど、プラークが口腔内に多く残ってしまう原因はさまざまです。
歯科医院でクリーニングと歯磨き指導を受けて、適切な歯磨きができるようになる必要があります。
歯周ポケットが4mm以上ある歯が一つでもある場合は、注意が必要です。歯周ポケットの中にプラークが入り込み、自分では除去しきれません。そのプラークは時間が経過すると歯石に変化し、細菌の温床になるため、歯周病が悪化する可能性があります。
歯石は除去してもプラークが14日間(※)ほどで石のようにかたまります。自分では除去できないため、歯周病のリスク低減や進行をおさえるためには、早めのクリーニングが必要です。
※参考:歯石(厚生労働省e-ヘルスネット)
プラークが口腔内に残りやすい環境の人は、虫歯のリスクが高まります。プラークが口腔内に残る理由は次のとおりです。
●甘いものや酸の強いものをよく食べる
●時間を決めずダラダラ食べる
●よくかんで食べていない
●口呼吸で口腔内が乾燥している
●過去に虫歯治療をした歯が多い
唾液に含まれている成分によって虫歯になりやすい人となりにくい人がいます。唾液に含まれている虫歯菌の数が多い場合や、緩衝能(酸性やアルカリ性に傾かないようにする中和する働き)が低いことにより、虫歯のリスクが高まります。
たばこを吸う人は、吸わない人に比べて虫歯、歯周病、口臭や着色のリスクが高まります。たばこの煙に含まれているタール(ヤニ)が原因です。
タールは黒く粘着力があり、歯に付着します。そのタールにはプラークがつきやすくなり、歯石ができやすい環境を作ります。また、たばこは歯ぐきに与えるダメージが大きく、歯周病が悪化しやすく、治りにくいことも特徴です。
歯並びが悪い人は歯磨きが難しく、磨き残しが多くなる可能性が高いため、クリーニングの頻度を早めることがあります。歯並びの乱れで歯が重なった部分には、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスがうまく届かず自分で汚れの除去が難しくなります。
そのため、虫歯や歯周病のリスクが高まるので、クリーニングの頻度を増やす必要があります。
予防歯科の頻度を早めないためには、セルフケアがとても大切です。セルフケアとは、日常的に自分で行う歯磨きのことです。どんなに定期的に歯科医院でクリーニングしても、適切なセルフケアができていなければ、虫歯や歯周病などのリスクが高まります。
適切なセルフケアに加え、食事習慣や生活習慣の見直しも必要です。具体的な取り組みを紹介します。
歯磨きは毎食後に行いましょう。鏡を見ながら歯の前面・裏側・かみ合わせる部分・歯ぐきと歯の境目に注意して磨きます。ブラッシングは圧が強いと歯や歯ぐきを傷つけてしまうため、やさしく磨くことがポイントです。
歯科医院の予防歯科では、歯磨き指導があります。正しいブラッシングのテクニックは、自己流ではなく、歯磨き指導で身につけましょう。
多くの人が歯ブラシのみで歯磨きを終えているといわれますが、歯ブラシだけでは、全体の約6割しか汚れが落とせません。歯と歯の間や奥歯、歯と歯ぐきの境目あたりは歯ブラシを当てにくく、磨き残しが多い場所です。
そこで、歯間ブラシやデンタルフロスを使用すると、約8割以上の汚れが除去できます。口腔内にプラークを残さないためにも、歯間ブラシやデンタルフロスの併用が重要です。
奥歯や詰め物、被せ物には、ピンポイントで磨けるタフトブラシがおすすめです。
予防歯科の歯磨き指導では、それぞれの口腔内の状況に合ったデンタルグッズと、その正しい使い方について適切なアドバイスも受けられます。
糖分を含んだ飲食物の過剰摂取は、虫歯のリスクが高まります。虫歯菌は糖分をエサにして酸を作り出し、歯を溶かしてしまうためです。しかし日常生活で糖分の摂取は避けられないため、口腔内に糖分を含むプラークを除去する歯磨きが大切です。
飲食物の摂取の仕方にも注意が必要です。食事や間食の時間を決めずに、ダラダラ摂取し続けると口腔内は酸性の状態へ傾きます。約30分後に唾液の成分によって、酸で溶けた歯の表面は修復されますが、ダラダラ食べ続けると酸性の時間が長くなるためです。
さまざまな生活習慣の影響によって唾液が減ることがあります。唾液には抗菌作用や、口の中の汚れを洗い流す働きがあり、減少するとこれらの働きが弱まり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
睡眠不足や過度なストレス、よくかまずに食べる、喫煙、飲酒、口呼吸などの生活習慣には意識して気をつけましょう。
適切な頻度は、歯科医師や歯科衛生士と相談して決められます。しかし自己判断によって、頻度の間隔を延期させてしまうと、次の5つのリスクが高まります。
一つずつ説明します。
虫歯の原因は、虫歯菌が作る酸によって歯が溶けることです。定期的なクリーニングを受けないと、プラークや歯石がたまります。歯石の表面はプラークが付着しやすいため、虫歯のリスクが高まります。
虫歯ができてしまった場合、初期段階では痛みがないので気付きません。適切な頻度で予防歯科を受けると、虫歯を早く発見してすぐに対処できますが、頻度の間隔を延期してしまうと発見が遅くなり、人によっては虫歯が重症化することもあります。
歯周病の原因はプラークです。プラークが長時間歯ぐきに付着し、歯周ポケットにも入り込みます。特に歯周ポケットの中は、酸素が少ないので歯周病菌にとって好都合な環境が整っており、活発に活動します。その結果、歯を支えている骨を溶かしてしまい、歯がぐらぐらになることも。
歯周ポケットのプラークや歯石は、歯ぐきの中に隠れているため自分で確認できず、除去できません。また、歯周ポケットの中の歯石は、黒く硬いので除去が難しいことも特徴です。
そのガスの匂いは、腐った玉ねぎの臭いや温泉のガスの臭いともいわれ、とても強い臭いがします。
セルフケアで磨き残したプラークが、口腔内で蓄積され歯石に変化し、さらにプラークが付着して細菌が増殖します。定期的にプラークと歯石を除去すると、口臭のリスクを低減できるでしょう。
歯の着色原因の多くは、飲食物の色素が歯に付着しすることです。毎食後の適切な歯磨きで着色を低減できますが、完全に防げるものではありません。
少しずつ歯に蓄積され、次第に黄ばんで見えるようになるでしょう。定期的に歯科医院のクリーニングで着色を除去すると、自分の歯の色を取り戻せます。
虫歯が悪化してしまった場合、歯科治療費と治療にかける時間が長く必要です。重症化した虫歯は、歯の神経を抜く処置や最悪の場合は歯を抜かなければならないこともあります。
歯の神経を抜く治療をした場合、個人差はありますが一本の歯に対して2〜3ヵ月治療期間が必要です。通院回数も増え、治療費も必要です。
歯科医院で受けるクリーニングの頻度は一般的に3ヵ月に一度といわれていますが、口腔内の状況に応じて頻度は異なります。口腔内の衛生状態が悪い人や虫歯・歯周病リスクが高いなどの理由で、頻度を早めて歯科医院のクリーニングへ通っていただく必要があります。
当院では、患者さまに合ったクリーニングや頻度を提案しています。予防歯科やクリーニングの頻度など気になることは、お気軽にご相談ください。