入れ歯を入れるだけでも痛い、噛むと痛む、入れ歯の出し入れの時に痛む、バネのかかっている歯が痛む。一概に入れ歯が痛いといっても、その原因は同じではありません。痛みの原因に則した入れ歯の調整をしなければ、入れ歯の痛みを取ることはできませんが、入れ歯が痛む原因は大きく分けて4つあります。
入れ歯が歯ぐきに合っていない
噛み合わせが入れ歯と合っていない
入れ歯に使用する材料や入れ歯のデザインによるもの
入れ歯が壊れてしまっている
入れ歯が痛い、というと「では、入れ歯を削りますね」といって入れ歯の内面、痛い部分を削れば痛みがなくなります。ただ、これは対処療法に過ぎません。痛みの原因を取り除いていないため、また別の場所が痛くなることがあります。そうすると、何回調整しても痛みが取れないということになります。では、どうすれば良いのでしょうか?
やはり、入れ歯の痛みの「原因」を取り除くことです。そのためには原因をしっかりと見極める必要があります。そして、原因に応じた入れ歯の調整をしなければなりません。
まず入れ歯の適合具合を噛ませずに診査します。「噛ませない」というところがポイントです。入れ歯をお口の中に入れ、入れ歯がガタガタと動かないかどうかを指の感覚と適合試験材を用いて調べます。新しく作ったばかりの入れ歯では通常、ガタガタ動くことはありませんが、使い込んだ入れ歯の場合は歯ぐきの形が変化していくため、ガタガタと動くことがあります。前者と後者でも調整方法は異なります。
まず入れ歯がガタガタと動かない場合です。歯ぐきはとても複雑な形をしています。歯ぐきの厚みが場所によって異なりますし、歯ぐきの下にある顎の骨は凸凹していることがあります。歯ぐきが薄い場所や骨が出っ張っている場所は痛みが生じやすいです。また、頬や唇、舌の動きに調和した形をしていないと痛みが生じやすくなります。ここで、当たっている場所があれば、入れ歯の内面を削って調整を行います。
次に入れ歯がガタガタと動き、歯ぐきに合っていない場合です。ガタガタと動く原因を取らなければ痛みは取れません。ガタガタと動くのは、入れ歯と歯ぐきの間に隙間があるからです。ですから、その隙間を埋め、入れ歯と歯ぐきがピッタリした状態にすることが調整の第一歩です。歯ぐきに傷がある場合は粘膜調整材という柔らかい材料を用いて、傷を治していきます。歯ぐきに傷がなければ、リベース材という材料固い材料を使用して、入れ歯がガタガタな状態を直します。
何度も入れ歯を削って調整したのに痛みが取れないことを経験したことありませんか?こういった場合、噛み合わせが原因であることがほとんどです。
噛み合わせが原因なら、噛んだ所が痛くなると思いますよね?違うんです。噛むと入れ歯全体が動きますから、右で噛むと左が痛いということが起こります。
噛み合わせの調整は歯ぐきの形や性質だけでなく、残っている歯の本数や歯周病の状態などによっても方法が異なります。食事をする際、下顎は複雑な動きをしますので、それに対応した噛み合わせの調整をすることで入れ歯は痛くなく、食事がしやすくなります。
また、入れ歯の歯はすり減ります。一方の側ばかり使って食事をしていると、そちらの歯がすり減り、噛み合わせのバランスが変化します。メンテナンスでは入れ歯の噛み合わせをチェックして、噛み合わせによる入れ歯の痛みが出ないようにしていく必要があります。
人の噛む力はとても強いので、入れ歯に強度がないと、噛む度に入れ歯がたわんでしまい、必要以上に歯ぐきに押し付けられ、痛くなります。そのため、入れ歯にはある一定上の強度が必要になります。そのため、金属を用いないノンメタルクラスプ義歯では硬いものを噛むことが困難になります。
確かに入れ歯が大きいと違和感が強くなり、装着すること自体が不快になりますが、入れ歯の大きさが極端に小さい場合にも問題が生じます。入れ歯が小さいと、噛む力を狭い面積で支えることになりますので、歯ぐきの単位面積当たりに加わる力が強くなり、歯ぐきに痛みが生じてしまいますので、入れ歯には力を受け止めるために必要な広さが必要です。
歯ぐきはクッションのような役割を担いますが、その歯ぐきが極端に薄い方では、入れ歯がピッタリと合っていたとしても、噛む力に歯ぐきが耐えられずに痛みが生じることがあります。下顎の総入れ歯の方で時折いらっしゃいます。その場合には歯ぐきがクッションになってくれないため、入れ歯にクッションを仕込みます。軟質裏装材という柔らかい材料を用いますが、この材料は劣化が早いため、定期的な交換が必要になります。
入れ歯にヒビが入った・かけた、部分入れ歯のバネが折れた・曲がったといったトラブルが起こると通常通り使用できなくなりますので、痛みが生じることがあります。
明らかに壊れてしまった場合は気がつけますが、わずかな場合は見てもわからないことがあります。昨日まで普通に使えてたのに、急に痛くなる場合は何かしらの破損が疑われます。
入れ歯は修理することも可能ですので、まずはご相談ください。慣れ親しんだ入れ歯を長く使うためには修理が必要になることもあります。
入れ歯が痛い場合、入れ歯の調整が必要になります。でも、すぐに歯医者にいけないこともありますよね。そんな時のために、自分でできる入れ歯の対処方法をお伝えします。ただし、これは応急的な方法ですので、痛みが緩和したからといって放置せず、歯医者でしっかりと診てもらいましょう。
入れ歯を外す時間を長くする
歯ぐきの傷が刺激されないように入れ歯を外し、必要な時だけ装着しましょう。
口内炎用の薬を塗る
傷の治りを早くすることが期待できます。
入れ歯安定剤を使用する
安定剤にはクリームタイプ、粉末タイプ、シートタイプ、クッションタイプの4種類があります。それぞれに特徴がありますが、入れ歯が痛い時におすすめなものはクッションタイプの入れ歯安定剤になります。ただし、安定剤が入れ歯や歯ぐきにこびりつくことがありますので、注意が必要です。
痛いからといって、自分で入れ歯を削ることは避けましょう。入れ歯の痛みの原因は様々ですし、削りすぎたことや違う場所を削るなどで痛みが和らぐどころか、痛みが増すことがあります。