ズキズキとした歯の痛みは、辛いものです。
虫歯による歯の痛みは時に耐えられないほどの痛みになることがあります。しかし虫歯も最初から強く痛むわけではありません。
虫歯の痛みの変化・治療法・痛みの対処方法について詳しく解説します。
虫歯は不可逆性疾患といわれていて、進行したものが元の状態に戻ることはありません。放置したら、その分どんどん進行します。
ズキズキと強い痛みが出る場合には、虫歯はかなり進行した状態にあることが多く、そうなる前にわずかな変化を感じた段階で受診すれば、辛い思いをすることはありません。
虫歯の進行度は、「CO」〜「C4」の段階で表されます。
虫歯の進行と痛みの変化について説明します。
いわゆる初期虫歯といわれる状態です。
まだ穴は空いていませんが、歯質のカルシウム成分などが溶け出し始めています。
歯質の色が白濁したようになったり、黄色っぽくなったりします。痛みなどの自覚症状は全くありません。
歯の一番表面の「エナメル質」の虫歯です。
エナメル質には、神経が通っていないため、虫歯になっても痛みを感じることはありません。見た目で少し穴が空いてきたのを感じる程度です。
この段階で治療をすれば、負担の少ない治療で済ませることができますが、自覚症状が無いので、発見しにくい状態です。
定期的に検診を受けることで見つかることがあります。
エナメル質の下の層である「象牙質」までが虫歯になった状態です。次第に穴が大きくなっていきます。
穴があることに自分で気付くことがあります。パッと見は、小さな穴でも中では大きくなっていることも多いので注意が必要です。象牙質には「象牙細管(ぞうげさいかん)」といわれる細い管があり、歯の神経と繋がっています。
そのため、神経に刺激が伝わり「歯がしみる」「痛む」といった症状が出始めます。
冷たいものを飲んだ時や甘い物を食べた時に「しみる」と感じる場合には、C2程度の虫歯になっている可能性があります。
虫歯が進行して、歯の内部の神経にまで達した状態です。ここまで進行すると、歯はズキズキと強く痛むようになります。
歯の内部の圧力が高まり、脈打つような耐え難い痛みになることもあります。
こうなると歯の神経を取る治療をしなくてはなりません。
治療する場合でも、炎症が強いと麻酔が効きづらいなどの問題が出る場合があります。
放置し続けて、歯の神経が死んでしまうと、痛みは感じなくなります。
虫歯がさらに進行して、歯の大部分が無くなり、歯の根っこしか残っていないこともあります。
歯の神経は死んでしまっているので、痛みを感じることはありません。
しばらくは痛みを感じませんが、歯の根の先にまで細菌が病巣を作ると、急激に腫れて強い痛みが出ることがあります。
虫歯は大きくなると強い痛みを感じるようになります。
痛みの原因である虫歯の治療が必要になります。
虫歯治療は、虫歯の進行の程度によって治療法が異なります。
虫歯がエナメル質、また象牙質でも小さな虫歯の場合は、コンポジットレジン充填という、歯科用プラスチックを詰める治療を行います。
虫歯部分の歯質を削り、コンポジットレジンを詰めて固めます。
1回の治療で済ませることができ、患者さまにとっても負担の少ない治療方法です。
虫歯の深さが象牙質までで、虫歯の範囲が広がってくると、型取りをして作った詰め物を詰める治療になります。
虫歯の範囲によっては被せ物のような形態になる場合もあります。
虫歯部分を取り除いてから、形を作って型どりを行い、出来上がった詰め物を入れます。
そのため最低でも2回の通院が必要になります。
虫歯が神経にまで達してしまうと、神経を取り除いて、根管治療を行う必要があります。
神経が入っていた根管内部を数回にわたって清掃し、薬を交換し、感染がなくなったら、最終的な薬を詰めます。
その後、土台を作る治療を行い、型どり、被せ物を装着する治療になります。治療回数は4回〜10回程度かかります。
神経の炎症が、歯の根の先まで広がってしまっていると、治療回数が多くかかります。
炎症が強い場合、麻酔が効きづらく治療に時間がかかったり、痛みを感じたりすることがあります。
虫歯で歯の大部分が無くなり、ほぼ根っこだけの場合では、状態によっては抜歯をせざるを得なくなります。
歯を抜く治療自体は1回で終わりますが、抜いてしまった歯は元には戻りません。
「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」のいずれかにより、失った歯を補う治療を行います。
基本的には、虫歯の治療をしなくては根本的な解決にはなりません。
しかし、仕事の都合など、どうしてもすぐに受診できない時もあるでしょう。
そのような場合には次のように対処をするようにしましょう。
市販の痛み止めを服用することで一時的に痛みが和らぐでしょう。
使用方法を必ず守り、正しい用量で服用するようにしましょう。
長期間の服用や過剰摂取には注意が必要です。
虫歯による痛みを和らげる方法として、患部を冷やすことも一つの方法です。冷湿布を当てたり、冷やしたタオルを当てたりすると良いでしょう。
冷やしすぎは却って、痛みを増強させてしまうこともあります。
氷を口に含んで直接冷やしたり、長時間冷やしたりすることは逆効果になることもあるので注意しましょう。
歯垢が溜まっていると、菌が繁殖して痛みが強くなることがあります。
触れるだけで痛い場合を除いて、丁寧に歯磨きをするようにしましょう。
虫歯でできた穴に食べかすが詰まって、痛みが増している場合もあります。取り除けるようであれば、そっと取り除くようにしましょう。
虫歯で歯が痛む時には、痛みが強くなるような行動に注意する必要があります。
次の点に注意して過ごすようにしましょう。
激しい運動や入浴、飲酒は、血液の循環が良くなり痛みが増すことがあります。できるだけ安静に過ごすようにし、お風呂はやめてシャワー程度にすると良いでしょう。
またお酒を飲むと痛みが紛れると感じることがありますが、一時的なものでさらに強い痛みが後で現れます。飲酒は控えるようにしましょう。
痛みがあると、痛い部位が気になって何度も触りたくなりますが、刺激になって痛みが増してしまうことがあります。
清潔にすることは大切ですが、強く磨かないようにしましょう。
また、指で直接触れると、手に付着している細菌が患部に侵入し、痛みを増す可能性があるため注意が必要です。
喫煙も患部への刺激になります。
喫煙者はリラックスのために必要だと感じるかもしれませんが、その習慣は症状を悪化させる可能性があります。
歯が痛い場合、必ずしも虫歯による痛みとは限りません。
自分で虫歯による痛みかどうかを判断することは難しいので、自己判断はせずにまずは受診をするようにしましょう。
虫歯以外で考えられる原因には次のようなものがあります。
冷たいものを飲んだ時にキーンという痛みやズキッと一瞬痛むような場合には、虫歯ではなくて知覚過敏の可能性もあります。
虫歯で最初に感じる自覚症状と似ています。
知覚過敏は、加齢や歯周病、強すぎる歯磨き圧、歯ぎしりや食いしばりなどが原因で、歯の根本の部分の象牙質が露出することで起こります。
知覚過敏は薬の塗布や詰め物で治療をすることが多いです。一過性のものでしばらくすると治ることもあります。
虫歯である可能性もあるので、自覚症状がある場合には必ず受診をするようにしましょう。
歯周病は、歯を支える骨(歯槽骨)や歯ぐきに起こる感染症です。
初めは、歯ぐきの腫れや歯ぐきからの出血などの症状が起こりますが、痛みはありません。
進行すると歯を支える骨が溶かされて、歯はグラグラと動くようになります。そうなると、噛んだ時などに痛みを感じるようになります。
また急性的に炎症が大きくなると、歯ぐきが大きく腫れて痛みが強く出ることがあります。
親知らずは前から8番目の歯で20歳前後に生えてくる永久歯です。
もともと無い場合もあります。生えるスペースが無いなどの理由で、斜めに生えていたり、半分埋まっていたりする場合や完全に顎の骨の中に埋まっている場合などがあります。
完全に埋まっていれば、トラブルを起こすことは少ないですが、斜めに生えている場合や半分埋まっている場合には、周囲に汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖して痛みを引き起こすことがあります。
「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」といわれるものです。
虫歯の痛みは、虫歯が進行するにつれて強くなります。
虫歯は放置して改善することはありません。必ず治療が必要になります。
虫歯が歯の神経にまで達すると、ズキズキと強い痛みを感じるようになります。その後、痛みが一旦治まりますが、治ったわけではありません。
侵された神経組織が完全に死んでしまったために、痛みを感じなくなった状態です。それでも放置し続けると、歯の根の先に膿が溜まり、強い痛みが出る場合があります。また歯も抜歯せざるを得なくなります。
少しでも自覚症状がある場合は、その段階で早めに受診することが大切です。
定期検診で虫歯のチェックも受けると同時に、検診前でも何か自覚症状があったら、早めに受診するようにしましょう。