基本情報 |
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70代女性 |
初診日:2017年12月 |
主訴:右下が痛い |
全身的既往歴:特になし |
歯の喪失理由:むし歯・歯周病 |
右下の歯は内側に倒れ込んでいました。上顎は前歯、下顎は奥歯が失われていたため、たがい違いの関係になっていました。
専門的には「すれ違い咬合」と呼び、難症例に分類されます。
上顎はノンメタルクラスプ義歯が装着されていました。金属部分は噛む力に耐えられず折れていました。
下顎は保険適応のレジン床部分入れ歯で、噛むたびにたわむ状態でした。
右下の奥歯は歯周病が進行し、揺れが大きかったので、残すことは困難でした。
その他の歯は多少の炎症はあったものの、歯周病は軽度と診断しました。なお、下顎骨が極端に吸収していました。
残っている歯が少ないため、総入れ歯と同様の手法での型取りを行いました。
個人トレーを用い、筋肉の動きを記録するための筋形成を行い、シリコーン印象材を使用しました。
人工歯は硬質レジン歯の中でも硬いとされるI社のものを使用しました。
残っている歯との調和を考慮した排列を心掛けました。
上顎は前歯部に力が加わっても外れにくい、4点で支える設計です。
下顎は入れ歯が撓まないように十分な金属を使用し、強度を確保しました。
歯と歯が前後的にすれ違って、噛み合う場所がありません。
残っている歯との連続性が保たれ、審美的な仕上がりとなりました。
また、上顎のクラスプはもともと装着されている銀歯に設定したため、部分入れ歯を装着しても見た目が損なわれることもありませんでした。
下顎は金属床としましたが、噛む力による顎堤吸収が生じました。
この時点でリライン(部分入れ歯の内面を顎堤に合わせ直す処置)を行いました。
その他は大きな問題は生じておらず、患者様からは高い満足度を得られています。
初診時と比較して、4mmの歯周ポケットも歯ぐきからの出血も減少しました。
その一方で歯の揺れは増加していますが、これは部分入れ歯との関係が考えられます。
部分入れ歯の適合具合を含めて注意深く、経過を追っていく必要があります。